みなさんは最近、飲食店で会計を済ませて領収書をもらったとき、こんなビジネスパーソンならではの「お悩み」に直面したことはありませんか?
「Tから始まる登録番号(T番号)のハンコはバッチリ押してある。……でも、消費税率や消費税額の記載がどこにもない……!」

実は先日、知り合いのお店に立て続けに2店舗ほど伺ったときのこと。 お会計の際に領収書をいただいたのですが、そこにはちょっとした盲点があったんです。

お店のオーナーさんは「インボイス制度が始まったから、ハンコを作って押しておけば大丈夫!」と親切心で対応してくれたのだと思います。

しかし、大変心苦しいのですが、法律(国税庁のルール)に照らし合わせると、その状態の領収書はインボイス(適格簡易請求書)としての要件をギリギリ満たしていない「不備がある書類」になってしまうのです。

知り合いのお店だからこそ、悪気がないのも、一所懸命対応しようとしてくれているのもよく分かる。だからこそ、「これ、実は……」と優しく教えてあげたくなるインボイスの正しいルールについて、今一度おさらいしてみましょう。

飲食店が発行できる「簡易インボイス」のルール

不特定多数のお客さんが利用する飲食店やタクシーなどは、通常のインボイスよりも少し項目が簡略化された「適格簡易請求書(簡易インボイス)」の発行が認められています。

国税庁のルールによると、簡易インボイスとして認められるためには、以下の5つの項目がすべて記載されていなければなりません。

  1. 発行者の氏名または名称(お店の名前など)
  2. 取引年月日(日付)
  3. 取引内容(お食事代など)
  4. 税率ごとに区分した対価の額(または消費税額など)
  5. 適格請求書発行事業者の登録番号(T番号)

今回私が遭遇した領収書は、5番の「T番号のハンコ」はあるものの、4番の「税率ごとに区分した対価の額」や「消費税額」の記載が完全に抜けていたのです。

なぜ「10%」や「消費税額」の記載が必要なのか?

お店側の心理としては、「うちは店内飲食だけだから一律10%。わざわざ書かなくても計算すればわかるでしょ?」という感覚なのかもしれません。
特に個人経営のお店ほど、こうした事務的な細かいルールは見落とされがちです。

しかし、インボイス制度のルールでは、「どの税率が適用されているか」を明記することが義務付けられています。

国税庁のガイドラインによると、簡易インボイスにおける消費税の記載は、次のいずれか(または両方)が書かれていなければなりません。

  • パターンA: 「10%対象 5,500円、うち消費税額 500円」のように、税率ごとの金額と消費税額を両方書く。
  • パターンB: 「10%対象 5,500円(税込)」のように、税率ごとに区分した総額だけを書く。

つまり、金額の横に「10%対象」や「消費税10%込」といったパーセンテージの文言が一切なく、ただ合計金額とT番号があるだけでは、インボイスとしては成立しないのです。

ビジネスパーソンや経理担当者は要注意!

もし、会社の経費精算でこの領収書をそのまま出して処理してしまうと、会社側は「仕入税額控除」という消費税の控除を受けられなくなってしまいます。

お店側に悪気は一切ないのに、書類を受け取った側(あるいは会社の経理担当者)が頭を抱えることになってしまうのが、この制度のなんとも切ないところです。

まとめ:お互いがハッピーになる自衛策とアドバイス

せっかくの知り合いのお店。もし関係性が深ければ、「そういえば、領収書に『10%対象』って一言書き加えるだけで、もらう側がすごく助かるらしいよ!」と世間話ついでに教えてあげるのも優しさかもしれません(お店が他のお客さんから指摘されて困るのを防ぐことにも繋がります)。

ただ、「やっぱりちょっと言いづらいな……」という場合は、手書きの領収書だけでなく、レジから出てくる「レシート」も一緒にもらっておくことをおすすめします。レジのレシートはシステム上、自動で「10%対象」「消費税額」「T番号」が正しく印字されるように設定されているケースが多いからです。

大好きな身近なお店を気持ちよく応援するためにも、もらう側もちょっとした知識を持って、スマートに対応していきたいですね。

投稿者プロフィール

岩田 かおり
岩田 かおり
月次監査や決算業務と共にDX推進担当を務めています。デジタル活用による業務効率化を図る一方、動画配信などを通じた分かりやすい情報発信にも注力。「数字の先にある想い」を大切に、お客様の経営に誠実に向き合います。